借地借家の法律関係6 – 借地非訟(3)
今回は,借地非訟手続における「介入権」についてご紹介します。
借地人の立場にある人が,その借地権や,あるいは借地上に所有する自己の建物を借地権付で第三者に譲渡したいと考えたとき,借地契約上または法律上,地主の許可を得る必要があるのが一般的です。
しかし,地主の立場にある人との間で,借地権を第三者に譲渡する際支払う承諾料の額等についてどうしても折り合いがつかなかったり,そもそも地主の立場にある人が,譲渡承諾の話し合いに応じてくれなかったりした場合,借地人として取りうる手段として,借地非訟手続があるということをこれまでご紹介してきました。
借地非訟の手続の中では,裁判所は,借地人が地主に支払うべき承諾料の額や支払時期等の条件を定めた上で,地主に代わり,借地権譲渡の承諾に代わる許可の決定を出します。
この承諾料の額については,借地権評価額の一割程度となります。
それでは,逆に,地主の立場にある人は,借地人が,借地非訟の申立てをし,この手続の中で裁判所が定めた額の承諾料の支払い等をすれば,その借地権が第三者に譲渡されるのを回避することはできないのでしょうか。
このようなとき,地主の立場にある人が取りうる手段として用意されているのが,介入権というものです。
介入権とは,地主の側が,借地権評価格から一割減じた額で,借地人が譲渡を予定している第三者に優先して,その借地権を買い戻すことができる権利をいいます。
地主が介入権を行使することを考える典型的なケースとして,借地人が予定している第三者への借地権譲渡価格や,裁判所の評価した借地権の評価額が,地主にとってあまりに安価であると思えるケースがあります。
たとえば,借地人からその第三者に借地権が譲渡され,承諾料をもらうよりも,地主の立場にある人が,借地権評価額の一割減の額で自ら借地権を買い戻した上,他の第三者に賃貸したり,譲渡したりする方が利益になると判断した場合,地主としては介入権行使の申し立てをすることが考えられます。
介入権の行使の申立ては,借地非訟手続において,裁判所が定めた期間内でしか申し立てることができません。
期間内であれば,一度申し立てた介入権の行使について,取り下げることも可能です。
当事務所においては,代表弁護士藤井篤が土地・建物の問題を含めた住宅事業専門の生協において理事も務める等,土地・建物の法律問題を長年多く扱ってきました。
現在でも,貸主側,借主側の双方で多くの借地借家関係のご依頼を受け,交渉・訴訟・非訟等の様々な事件を受任しております。
借地借家の問題でお悩みの方は,是非ご相談ください。