所長・藤井篤弁護士にインタビュー!

当事務所の所長である藤井篤弁護士に,若手弁護士が,「弁護士になろうと思ったきっかけ」や「弁護士としてのポリシー」などをインタビューしました。

弁護士になろうと思ったきっかけは?

私は1950年生まれなので、1970年、「70年安保」の頃は学生でした。大学紛争で1年間大学の休校が続く状況でした。私自身も学生運動に参加していましたし、就職は考えていませんでした。気がついたときには大学4年生。

弁護士という職業が一番自分のやりたいことに合致していました。

 法曹界のなかでも公務員である裁判官や検察官は考えていなかったので、弁護士になろうと思いました。

質問
1

弁護士になってどんな活動をしてきたのですか?

 私は,昭和54年(1979年)に弁護士になりました。弁護士になって40年以上になります。

弁護士になってから20年ほどは,町弁として様々な事件を担当してきました。

弁護士1年目に担当したサンドイッチ店チェーンの倒産事件は特に印象に残っています。「ジャンボリア」というサンドイッチ店のオーナー店長の会が,会社の倒産に抗して,店舗を自主運営するための活動をしました。店長たちは会社に1000万円前後の入会料の手形(計60通)を切っており,毎月支払うことになっていましたが,手形が譲渡され手形訴訟が起こされました。最初は,どういう方向に進むのか皆目検討もつかない中で,店長さんたちの会合に出席しました。1年目の弁護士なのに,法律的な判断や方向を示したり,議論を進めていくことの大変さと醍醐味を経験しました。

もう1件特に印象に残った事件は,弁護士4年目に担当するようになった山梨の病院の倒産事件です。それから数年間は,山梨や長野,北海道,秋田,大阪などへ行き,倒産した関連会社の資産の売却や会社の整理の仕事をしました。ちょうど長男が生まれたばかりの年から,多いときは1年に100日も出張していました。長男は「こうぶ・こうぶ」と言っていたそうです。関連会社から暴力団が商品を運び出そうとしていることを聞いて,真夜中に甲府市郊外の現地で暴力団とわたりあったり,関連会社の経営者に付き添っていろんな債権者と直交渉をしたりしました。関係者の自殺,従業員による会社資金の持ち逃げ,従業員の解雇,暴力的な取立てなど,弁護士経験10年以下の若造が,そうしたことを実地で体験させてもらいました。関連会社の社長と,債権者である大阪の建設会社(本社)に債権の減額交渉のため何度も足を運んだことや,北海道屈斜路湖の物件を確認するために北海道に足を運び物件の処分をしたこと,秋田県田沢湖のスキー場管理のため田沢湖に通いスキー場を売却したことなどが懐かしく思い出されます。

1989年11月,坂本弁護士一家殺害事件が発生しました。私がいた事務所では,坂本さんのお母さんを事務所に招いて話をしてもらいました。私はその後,横浜の弁護士と協力して,オウム真理教から脱会した元信者の支援活動をしました。また,総選挙で麻原が立候補した時に信者たちが杉並区で虚偽の住民登録をして投票した件について警視庁に告発しました。オウム真理教の診療所に入院した女性が不動産を寄付させられた件で女性を診療所から脱出させた息子からの依頼を受けてオウム真理教相手に不動産の返還訴訟を起こしました。オウム真理教の杉並区の道場について明渡し訴訟を起こし判決を得て明渡しの執行をしたこともあります。東京の弁護士でオウム相手の裁判を最も多く担当したのは私だと思います。

民事訴訟の期日には信者らしき傍聴者も毎回きており,私の自宅の電話に「ポアするぞ」(殺すぞ)と脅しの電話が入ったり,事務所付近をオウム真理教の信者とおぼしき人がウロウロすることが相次ぎ,毎日自宅への帰路を変えて帰宅したり,と貴重な経験をさせてもらいました。オウム真理教によるサリン事件が発生したとき,私は,犯人が誰なのか世上では全く分からないとされていた状況の下で,オウムが犯人であることを確信していました。

 1990年に入るころ,バブル経済となりやがてバブル崩壊となりました。バブル期には暴力的な地上げ屋との交渉事件,バブル崩壊後は,マルコーなど海外不動産販売持分販売での事件を受任しました。マルコーでは1000人を超える集団訴訟を提起し,かなりの成果をあげることができました。

 1997年(平成9年),私は第二東京弁護士会の事務局長になりました。その後,司法制度改革審議会が始まり,私は,日本弁護士連合会(日弁連)司法制度改革担当の嘱託,事務次長などを2005年(平成17年)まで務めました。約8年間,弁護士会の仕事を中心にやってきたことになります。弁護士会が質量ともに大きく様変わりしていく状況の中で,新しい弁護士像,弁護士会のスタイルを作っていく仕事でした。

 その後,2005年(平成17年)9月から2014年(平成26年)9月までの9年間,私は,第二東京弁護士会の都市型公設事務所(東京フロンティア基金法律事務所)の所長をしました。自分で仕事をしながら,若い弁護士たちの指導をし,仕事のスキルの高い弁護士を育て,弁護士が少ない全国の各地に弁護士を送という仕事です。私が送り出した弁護士は30人に達し,全国各地で活躍するようになりました。

STEP
2

アルタイル法律事務所を設立したのはどうしてですか?

公設事務所の所長を退任した後,もう一度,弁護士の原点に立ち返って,若い弁護士たちと仕事をし,私の経験を伝えながら,これからの時代に求められる弁護士像を作っていきたいと思うようになりました。

質問
3

弁護士の仕事をしていて嬉しいときは,どんなときですか?

依頼者の方はもちろん、相手の方にも喜んでもらえた時です。紛争がうまく収まり、両者が納得して解決できたときは、達成感を感じます。クレサラ問題で依頼者の家まで行き、説得を続けた結果、解決へとつながったこともあります。

解決後も付き合いがあり「先生が家まで来てくださったおかげで死なずに済みました。」という言葉をいただいた時は、とても嬉しかったですね。フットワークを軽くし、現場に行くという行動力はいつまでも大切だと思っています。

質問
4

どのようなポリシーで仕事をしていますか?

 弁護士になった最初の頃は,労災職業病の事件をやりたい,刑事事件をやりたい,行政相手の訴訟をやりたいなどと思っていたのを覚えています。しかし,実際に弁護士になってみると,目の前に現れる事件があり,その事件の依頼者がいます。事件処理については,とにかく迅速に事件活動に取り組むというのが私のモットーだったので,事件の好き嫌いなどは考えず,がむしゃらに事件活動に取り組みました。

 経験を積む中で,弁護士の仕事に関するポリシーも,変化してきます。

事件の見通しの立て方(見立て)や,依頼者の求めることとその実現可能性や妥当性,相手方の考えることや相手方がやろうとしていること,今何をすべきかなどは,情報が比較的少なくても判断できるようになります。しかし,簡単に見える事件でも奥深い問題をかかえているものもあるし,人間の心の深みや本当の欲求を理解することは,ときには大変難しいことも分かってきます。ときには,じっくり構えて動かないのがベストのこともあるし,ディフェンスにまわるときは相手からの攻撃を受けて受け切ることが最良の対応といえる場合もあります。

 弁護士として,社会常識の範囲内で最大限サポートし,依頼者の正当な利益と権利を擁護することが使命だと思っています。「仕事は速く,的確に」というのが私のスタイルです。「弁護士として,最高の技術を提供する」というのが私の理想です。

質問
5

特に関心のある分野は,どのような分野ですか?

 建築問題は,多くの事件を扱ってきましたし,好きな分野の一つです。建築主,工事業者,設計者など立場がちがうととらえ方も違うし,アプローチの仕方も違うので,面白さを感じます。

土地・建物,借地権,区分所有権などがからむ不動産問題は,制度や地域の特性と人間くさいところが入り混じっているのでやりがいのある事件が多いと思っています。不動産事件について本も書きましたが,ライフワークにしたいと思う分野です。

消費者問題は,消費生活センターからの紹介などの事件をかなり手がけました。時代の風を感じますし,実に次々と新しい問題が登場するので,相談がくるたびに,何かわくわくするところがあります。

また,病院の顧問をしている関係で,医療関係の事件もかなり扱いました。もともとは,患者側からの事件が多かったのですが,医療側と患者側から事件を見るようになって,医療事件の訴訟などかなり精通するようになったと思っています。

いろいろな種類の事件を通して,どのような組み立てを構想し,どのように解決に導くのかを考えていくのは,弁護士としての仕事の本能を刺激するので,好きです。

 弁護士としての技術や,事件活動には,誰にも負けないという自負があります。あと何年かは,第一線の弁護士として,やれると思っています。

質問
6

法律相談に来ようと思っている方へのメッセージをお願いします。

法律にからむ問題で迷ったり悩んだりしたら,まず,相談してみることをお勧めします。

 最近は,初回相談無料とする法律事務所も多くありますが,アルタイルでは,30分5500円の相談料をいただいています。

 法律相談は,弁護士にとって,最初にして大きな労力の必要な事件活動です。弁護士にとっても,最初の法律相談の良し悪しが,その後の事件活動の成否につながるほどのものです。

 法律相談は,どういう事実関係なのか,その中でどういう問題が起きているのかを弁護士がきちんと把握し,解決に向けた方策を弁護士と相談者(依頼される方)が探っていく作業です。それぞれの法律問題の種類に応じて,弁護士の取り扱い分野もある程度分かれています。その分野の事件活動をある程度以上経験した弁護士なら,相談された案件のポイントと,解決のためにどういう道筋が考えられるかが分かります。それを,弁護士の力を借りながらつかんで行くのが法律相談です。法律相談の後に,事件を弁護士に依頼するかどうかは,法律相談をする中で考えていきます。

 弁護士が事実関係を正確に把握できるように,できれば,資料を収集して整理しておくことがベターですが,どういう資料が必要なのかわからない場合には,そこから相談をするのが普通です。

 弁護士に相談をして,ご自分で,事件に取組む方も多くいらっしゃいます。その解決への筋道を,ご自身で把握することが大切です。

私は,公設事務所の所長を勤めた9年間に3000件を超える法律相談をお受けし,相談者の方に法律家としてのアドバイスをしてきました。法律相談を受けるだけで,ご自分で,事件を解決される方も多くいらっしゃいます。法律相談の目的は,このあたりにあると思っています。

気軽に,早めに,弁護士に相談されることをお勧めします。

STEP
7