私道の紛争4 – 通行制限・駐車禁止

私道は、原則として私人が所有し管理する私有地です。このことからすれば、私道の利用方法についても、その所有者が自由に決められるのが原則です。

  しかし、これまでコラムで挙げてきたとおり、私道であっても、何らかの理由に基づき他人の通行権が設定されていたり、建築基準法上の道路となっていたりと、一定の制限が課されている場合もあります。

  それでは、私道の所有者は、どのような範囲で、自分の所有する私道の管理・利用方法を決められるのでしょうか。

  たとえば、その私道に、誰の通行権が設定されている訳でもなく、建築基準法上の道路でもない場合は、その私道の所有者は、通行の制限や禁止等を自由に出来るのが本来です。

 一方で、その私道に、誰かの通行権が成立している場合には、その通行権を侵害するような通行制限はもちろん出来ませんし、その通行権の目的を阻害するような物を私道上に置くことも出来ません。

 その私道が、建築基準法上の道路であれば、その私道の変更・廃止が制限される等の制限を受けますから、この規制に反する形で、私道を利用したり、第三者の通行を制限したりすることは出来ないということになります。

  私道をめぐるトラブルで多いものの一つが、駐車をめぐるものです。

  ある私道上に、通行権を有していない第三者が駐車をしている場合、その私道所有者は、基本的には、その駐車の制限や禁止をすることが出来ます。

また、通行権を有する者であっても、長時間の駐車をすることは、もはや通行とは言えませんから、許されないと考えられています。ただし、この「長時間の駐車」というのがどれくらいを指すのかについては、その私道の具体的な状況により決まることになります。

 なお、私道上に駐車をすることは、私道の所有権と通行権・通行の利益との間の問題という観点からだけでなく、道路交通法上の規制や、自動車の保管場所の確保等に関する法律といった別の法的規制の観点から見る必要もあります。

 道路交通法上の「道路」とは、道路法に規定されている自動車道(道路法第2条8項)及び一般交通の用に供するその他の場所を言いますが(道路交通法第2条1号)、ある私道がこの道路交通法上の「道路」ということになれば、道路交通法による駐車についての規制を受けます。

 また、自動車の保管場所の確保等に関する法律上の「道路」に当たる私道に、私道を車の保管場所として使用しているような駐車をすると、罰則の対象ともなります。

これまで、四回にわたり、私道に関する法律問題の一部を取り上げてきました。

私道にまつわる問題は、複数の法律規制が存在し、法的関係も複雑なものが多いほか、不動産や建築等の実務の現状を知らなければ適切な解決を図ることは困難です。

 当事務所の代表弁護士藤井は、通行・道路問題を含む土地・建物の法律問題を特に専門の一つとしてきたこともあり、これまでも、私道の通行に関する紛争について、多くのご相談・ご依頼を受けてきました。

 私道の問題でお困りの際は、是非当事務所までご相談下さい。

 次回からは、借地借家関係についてのコラムを掲載する予定です。