借地借家の法律問題1 – 正当事由と立退料

「正当の事由」とは,建物所有目的の土地や,建物の賃貸借契約において,貸主の側から契約更新を拒絶したり,解約の申入れをしたりするときに必要となる事由のことを言います(借地借家法6条,28条)。

それでは,この正当事由の有無とは,どのような基準によって判断されるのでしょうか。

借地借家法28条を見てみると,正当事由の有無を判断する際の考慮要素として,①建物の使用を必要とする事情,②建物の賃貸借に関する従前の経過,③建物の利用状況および建物の現況,④立退料支払いの申し出を挙げています。

しかし,①から④の要素を,具体的にどのように考慮して正当事由の有無を判断するのかということは,定かではありません。

実務では,正当事由があるかないかの認定は,その事案の様々な事情を総合考慮することにより行われており,個々の事案の性質によるものとなっています。

そのような中での大まかな傾向として,正当事由の有無を判断する要素として重要視されているのが,①の「建物の使用を必要とする事情」です。

たとえば,貸主が,これまで住んでいた場所に事情により住めなくなり,貸していた土地や建物を貸主自身の住居として使わなければならなくなった場合,すなわち貸主の自己使用の必要性という事情がある場合は,その事情は,正当事由として高く評価されることになります。

これに比べて,たとえば,貸主が,今の借主よりもっと高く借りてくれる別の人間に貸したいというような事情がある場合,そのような事情は,自己使用の必要性と比較して,正当事由としては低く評価されています。

このような,個々の事案にある様々な事情とあいまって,正当事由を補強する要素として考えられているのが,④の立退料です。

立退料は,一般的には,その事案において,他に正当事由として強く評価される事情があればあるほど低く算定される一方,正当事由として評価される事情があまりなければ高く算定されます。

すなわち,立退料は,正当事由の判断において,個々の事案内での諸事情を補完する調整弁のような役割を果たすことになります。

賃貸借契約の更新拒絶や解約,立退きについては,上記のように,個々の事案の様々な事情を考慮した上で適切な方法をとる必要があり,法律のみならず,現在の実務のあり方や不動産問題の現状を知らなければ,解決に向けた適切な方針は立てられません。

当事務所では,代表弁護士の藤井篤が,土地・建物の問題を含めた住宅事業専門の生協において理事も努める等,土地・建物の法律問題を長年多く扱ってきたこともあり,交渉事件と訴訟事件の双方で多くの借地借家関係のご依頼を受けております。

借地借家問題でお困りの方は,是非ご相談下さい。