借地借家の法律関係3 – 地代・賃料の値上げ

 土地や建物の貸主が,地代や家賃の値上げをしたい場合や,借主が,貸主から地代や家賃の値上げを通告されている場合は,どのように対処すればよいのでしょうか。

値上げができる場合とは

借地の場合,借地借家法11条1項本文は,地代等が,

  1. 土地に対する租税その他の公課の増減により不相当となったとき
  2. 土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により不相当となったとき
  3. 近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったとき

は,契約の条件にかかわらず,当事者は,将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる,と定めています。

 借家の場合にも,同様の規定があります(借地借家法32条1項本文)。

 ただし,借地,借家のいずれの場合も,一定期間,地代や家賃を増額しない旨の特約がある場合,原則として,その期間は,値上げはできません(借地借家法11条1項但書,同法32条1項但書)。

貸主側の対応

 地代や家賃の値上げをしたい貸主は,借主に対して,値上げの意思表示を行います。この意思表示は,口頭によってすることも可能ですが,争いが予想される場合には,書面で行う方がよいでしょう。

  貸主は,借主との交渉で合意に至らない場合は,簡易裁判所に賃料増額の調停を申立てます。いきなり訴訟を提起することは,できません(民事調停法24条の2第1項)。これを調停前置主義といいます。調停では,調停主任(裁判官)と2人の調停委員が間に入って,話し合いを行います。地代,家賃の増減額の調停では,調停委員は不動産取引や不動産の評価に詳しい者が選任されています。

  調停は,当事者間の合意によって成立するので,当事者の合意がととのわず,調停不成立になった場合には,貸主は,訴訟を提起することになります。

借主側の対応

 借主は,貸主からの値上げの請求を承諾できない場合,貸主にその旨を伝え,とりあえずは,自らが相当と認める賃料の支払いを続ければ足ります(借地借家法11条2項本文,借地借家法32条2項本文)。

  ただし,後日,値上げが認められた場合には,賃料の増額を請求された時点からの不足額に,年1割の利息を付けて支払わなくてはなりません(借地借家法11条2項但書,借地借家法32条2項但書)。また,あまりにも低い額の支払いを継続した場合,賃料不払いを理由に賃貸借契約を解除されることもありますので,対応に注意が必要です。

当事務所では,代表弁護士の藤井篤が,土地・建物の問題を含めた住宅事業専門の生協において理事も務める等,土地・建物の法律問題を長年多く扱ってきたこともあり,貸主側,借主側の双方で多くの借地借家関係のご依頼を受け,交渉・訴訟・非訟等の様々な事件を受任しております。

賃料の値上げや値下げの問題でお悩みの方は,是非ご相談ください。